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重さありありと
・てのひらに小鳥が眠っているような重みを玉子サンドはもてり
     鍋島恵子『短歌(角川/2012.11)「ペットボトルとつりあう宇宙」』

 やわらかい重みである。ささやかな重みである。そしてそれは命の重みでもある。玉子サンドの重量感を眠れる小鳥に託した、そのゆるやかな心の動きが滲みだす。はっきりとではない、しかし無視してはおれぬような、そんなやさしさに似た重みをもって。

・紙袋に乳児捨てられし記事を読みその重さありありと抱きなほす
     大口玲子『トリサンナイタ』

 まだ幼い子が捨てられたり、餓死したり、というニュースがある。ふと我にかえれば、そこにわが子の重さをありありと感じる。しかしこの子を落としてはならぬ、と抱きなおす。単に重力があるだけでなく、そこには命あるものとしての重みがある。

・家族にはアルバムがあるということのだからなんなのと言えない重み
     俵万智『チョコレート革命』

 実家がない、親がいない、そういうことだってある。実家というのは祖父母の写真や誰かの賞状、子どものときに描いた絵などが飾ってあって、そこには家族の歴史が詰まっている。アルバムというものも、写真を撮る人があり、そしてそれを残す人があって初めてできるものだ。

・人間の重みに圧されたるところ草は濃緑(こみどり)の匂ひを立てぬ
     横山未来子『金の雨』

 踏んだところの草が、それは繊維がちぎられることによって、匂いを立てる。生きているものの匂いというのはなまぐさい。人間もまたそうである。しかしそこに在るだけの匂いではなく、圧力を受けたり、傷つけられたりすることで滲みでる匂いもある。そしてそれらのほうがやはり濃いのである。
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