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山階基と〈もの〉のうた
 手元にある『早稲田短歌』44号の連作の終わりに、山階基の「炎天の横顔」30首がある。新人賞候補作品をもとに改稿したとのこと。

・二回着て二回洗へばぼんやりとわがものになる夏服である

 新しく買った夏服だろうか、はじめはよそよそしい感じがあって、それがしだいになじんでいくところを詠っている。あるいは貰いものでもいいけれど、なんにせよ、こういう〈もの〉への視線に、山階基を感じる。「夏服である」という語り口もおもしろい。

・おろしたての傘にまつすぐ雨は降る朝から好きなもの食べられる
     「冬猫」『朝日新聞(2013.3.26/夕刊)』
・枕カバー外して洗ふ 知りえないところで僕が話題にあがる
     「革靴と花火」『早稲田短歌』43号
・なんにでも理由をつける取り込んだ洗濯物にまみれて眠る
     「寒い昼」『短歌(角川/2014.11)』

 「おろしたての傘」「枕カバー」「洗濯物」、いずれも冒頭のうたに通じるアイテムだが、これら三首はいずれも〈もの〉を通して自分を見ている。〈もの〉との距離感から自分をはかっている。それが一首の構造としてもはっきりしている。そこあたりが「夏服」のうたとは違っていて、〈もの〉だけで最後までうたいきるとき、「夏服である」という結句がうまれたのだろうか。すこし余裕のある、くすぐったい歌だ。

・友人は生きてゐるので数日を預けた留守のシャンプーが減る

 友人が生きていることを、〈もの〉を通して確認している。それをそのまま気づきの歌にしたのでは、ややオーバーな感じがしてついていけない。そうではなくて、「ので」とわたすことによって、この一首の雰囲気がえられたのだと思う。
 だいたい、生活のなかの〈もの〉というのはあまりになじみすぎていて、特別なことがないかぎり、なかなか意識されない。そのような、注目されない〈もの〉たちが、山階さんの歌にはよくでてくる。服や道具や建物や飲み物。それらとの距離がぐっと近い。このうたについて言えばすこし不安になるけれど、全体に〈もの〉への愛着っていうのかなあ、そういうものを感じる。

・記念すべきセックスは果てラーメンが食べたくなりぬ服を着て行く
     「氷なし」『早稲田短歌』42号
・目が覚めたあとに鳴るにはやかましい目覚まし時計いいやつなのに
     「夢のホテルに」『短歌研究』2014.11

(山下翔)
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